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『そしてボクは外道マンになる』

2019.05.10 (Fri) Category : マンガ

(本文は5月16日、22日~25日に書いています)

5月3日の記事の続きで、平松伸二先生『そしてボクは外道マンになる』の話題です。


まずは第3巻の表紙。



こ、この表紙にいる怪しげな〝黒い怪人〟はなんだァァァァッ!?


この怪人こそ、第2巻ラストで現在の平松先生の背中から立ち昇るように出現した黒いオーラの正体です。
そしてこの怪人こそが、作品タイトルに名前が出てくる〝外道マン〟なのです。

なんだと~~~~?
「外道マン」ってのは、平伸自身「外道マンガ家」になるってコトかと思ってたぜぇ~! タイトルからするとよ~
まさか、別個のキャラとして登場するとはなァ~~~~

…と思ったのですが、この〝外道マン〟は平松先生の心が生み出した存在っぽい(「ダークサイド、闇の部分の本音を吐く分身」だそうです)ので、まあ間違いでもなかった(^^;)

というか、〝外道マン〟自身が



と言ってるので、両者は並び立つらしい(?)です。
ともかく、現在の平松先生の前に現れた〝外道マン〟。

名前のとおりまさに外道な〝外道マン〟は、平松先生を怒らせて〝外道マン〟にしようと、あらゆる罵詈雑言を並べてます。
事実であること、勘繰りじみたこと、余計なお世話なことまで言われ、遂にブチ切れた先生。
「その目だよ!! その目エ!!
 やっぱ平松伸二の目は そうでなくっちゃよオオオ~~~!!」

怒りに燃える目を見て愉快そうに笑う〝外道マン〟でしたが、平松先生が手にした刀で真っ二つにブッた斬られた!?

…ま、妄想でしかない存在なので、ブッ〇せるわけないんですけどね。
ついでに刀は模擬刀だし。

暴れたせいかギックリ腰をやらかして倒れ、〝外道マン〟からの追い打ちのキツイ言葉を浴びせられた平松先生は



…我々からすると、この方ほどセンスを持ってる人はいないと思えるのですが。
唯一無二の存在って感じだし。


ともかく、そんな平松先生に〝外道マン〟は唆すように言います。







『ブラック・エンジェルズ』…
それは平松先生の最大の代表作にして、今なお語られることの多い傑作。〝外道マン〟が初めて姿を現したのは『ブラック…』の連載を始めた頃だそうです。
外道を退治するのは『ドーベルマン刑事』と同じものの、『ブラック…』は主人公たちが裏社会側の人間であり、本人たちも正義とは言い切れないことを自覚しています。それ故、話はハード。許す余地を探すのが難しいくらいの外道達が次々と登場し、その外道達を主人公たちは容赦なくブッ〇していき、まさに「平松マンガ」の真骨頂的作品
〝外道マン〟曰く、当時の平松先生は(登場人物に過剰に感情移入してたので)「殺人鬼の目!! 」をしていたそうで、まさに外道マンガ家。多くの読者が取り上げるのを待ち望んでいるでしょう。

しかし、青年・伸二を外道マンにすることに抵抗がある現在の平松先生。
『ドーベルマン…』連載時から『ブラック…』連載時まで時間を飛ばしたり、ここまでジックリと描いてきた平松青年の青春劇を変えてしまうことにも抵抗があるのでしょう。
結局、『ブラック…』まで話が飛ぶこともなくこの回は終了。
平松青年も外道にならず、むしろますますいいヤツに。(そもそもイメージとのギャップも面白いマンガだしね)
〝外道マン〟の方が怒り狂うラストでした。



ここで第3巻の主な話題。


まずは掲載誌の移籍

件の〝外道マン〟登場の次の話(第10話)から、「グランドジャンプPREMIUM」から「グランドジャンプ」に移籍。
こういう事も話の流れに取り込むとは…
しかも楽屋オチとかメタ要素なんてチンケなもんじゃねえ~~~~!?

その移籍に関して、〝外道マン〟は不安を煽るように言います。



各話のページ数は減るとはいえ、隔月刊から隔週刊だから〆切りは4倍だからなぁ…
被害妄想をさせて先生を怒らせようとする〝外道マン〟でしたが、この時の先生はわりと冷静だったので一笑に付し、逆に「オレの体の事を心配してくれてんのか!?」と余裕の表情。
〝外道マン〟は「誰が心配するかよ!」と言い返すのですが、平伸流のツンデレか?

(といっても、先生が死ぬと自分もこの世から消えてしまう、という自分本位の理由で心配しているのですが)

ともあれ、いろいろと愉快なキャラとなってきました。
…もちろん、外道ですが。



実在する人物(名前を変えている人も含めて)次々に登場。
有名な人物もいまして、個人的に嬉しかったのは

高橋陽一氏

ご存知『キャプテン翼』の原作者です。平松先生の下でアシスタントしてたのは聞いたことがあったのですが、遂に登場でワクワクしました。
スポーツ漫画といえば「スポ根もの」で泥まみれな熱い作品しか浮かばなかった平松先生には、陽一先生が描く爽やかな漫画は衝撃的だったそうです。
(ちなみにご存知の方も多いと思いますが、平松先生に野球を描かせると、やたらと バイオレンス になります。投手が球場に逃げ込んできた強盗に銃で撃たれたりとか)


こんなコマも

やがて翼を生やして世界に飛び出して行く弟子に、負けを認めた平松先生のイメージ。
まあ平松先生の漫画は間違いなく傑作なのですが、万人受けするタイプでもないからなぁ…
苦手な人には勧めづらいし。

でも陽一先生の漫画って

  • 殺伐としたシーンがわりとある
  • 集中線とか擬音とか構図とかに妙に迫力がある
  • 明和FCの黒一色のユニフォームのベタの塗り方がカッコいい
と、多分に師匠の影響を受けてると思われる所も見られるンですが。


それから『ドーベルマン刑事』終了
4年強、全29巻で堂々の完結です。

次の連載作品は、原作者との共同作業ではない初のオリジナル作品となる『リッキー台風(タイフーン)
趣味のプロレスを題材にしたこともあり、楽しんで描いてる平松先生。
でも、人気はイマイチ?

担当の魔死利戸(マシリト)氏曰く



結局『リッキー…』は、前作と比べると短命で終了。(連載期間1年半、全9巻)


その後、次の連載が始まる迄の間に結婚式を挙げる平松先生。
祝いの席では初の担当編集者だった権藤狂児氏(※劇中での名前)にこう言われます。



漫画家という職業でなくとも、祝いの席で敢えて「浮かれないように」と釘を刺すことを言われることはあるとは思います。
でも平松先生の場合だと、「お前に幸せは似合わねえだろうが~~~~!!」っぽくなってしまうのが何というか。
上記の魔死利戸(マシリト)氏のセリフとも合わせ、平松マンガとはいったい何かがよく分かります。


『リッキー…』連載時のエピソードが描かれると同時に、来るべき新作の登場に向けていろいろと伏線が貼られていきます。
ふと思い出したことや何気なくした行動が、後に新作の主人公の設定となるのです。
そして雛形となる読み切り作品を掲載した後、第3巻ラストで新作の題名も決定。
先ほどの権藤氏の一言が頭の中で連呼し、憑りつかれたようにネームを切る平松先生がスケッチブックに記していた題名こそ、

『ブラック・エンジェルズ』!!

〝外道マン〟に「ブラック・エンジェルズ編」まで時間を進めろと言われた際には拒否する行動を取りましたが、時間軸どおりにジックリ描いて、満を持してその時が来たのです!!


そして第4巻で、いよいよ『ブラック・エンジェルズ』連載決定。
主人公の雪藤洋士のデザインも、いろいろあったものの完成です。




その第4巻ですが、平松先生はかなり荒んだ状態になります。

ヤバい目をしてアシスタント達をビビらせる平伸。
縁起でもない話題をしていたからとはいえ、そのアシスタント達を脅かすとは…
(ちなみに直に脅かされたこの人物は、アシスタント時代の猿渡哲也氏)

上記の権藤氏と大ゲンカする平伸。
ガチの殴り合いで、初期の気弱な青年とはすっかり様変わり。

他にもいろいろあり、遂には倒れた平伸。
ギックリ腰は、この時初めてやらかしたそうです。
ちなみに『グラジャン』本誌に掲載時、アオリ文句「ま、なるわな…」と短めに書かれてました。このぞんざいな言い様。やはりグラジャン編集部外道だぜェェェェ~~~!?
(というか、編集部は自分たちの立ち位置をよく理解しているぜ~~~~)


話は前後しますが、

倒れるちょっと前、過去の伸二青年の前に


遂に〝外道マン〟が出現!?
この時が初の対面で、伸二の怒りが頂点に達したことで出現。
「(伸二の)ダークサイドの分身」で「外道マンガ家の本性」であるといわれ、戸惑う平松青年。



一方、現在の先生の状況



打ち切り決定…!?

これまでの集大成のつもりで描いていた作品が否定されたも同然の扱いに



これほどまでに悔しさ溢れる涙を君は見たことがあるか!?



一方、過去の伸二は



皮肉にも〝外道マン〟出現が、彼に自らの 業 を悟らせたのでした。


そして、『ブラック・エンジェルズ』連載スタート
〝外道マン〟が当然のように出現し、ドス黒いエネルギーでマンガを描く平松青年。
以後、「外道共を散々ブッ〇して」いくことになります。


最終回1話前。
残されたページ数は少ないのというのに、人気キャラの松田さんの誕生エピソードを入れてくれたのが嬉しいです。


最終回。
ネームを切る現在の平松先生の前に、今日も〝外道マン〟は出現。


そして…











先生ェェェェェェェェェ!?



というわけで、見事に完結(?)
いろいろな要素が加わり、気づけば裏話的な漫画から、〝外道マン〟あるいは編集者との闘いを描いた漫画(?)に様変わり。そのワリに連載時はあまり気にならなかったという点も含めて、往年の「少年ジャンプ」漫画っぽい気もします。
最初の頃のノリで最後まで見てみたかったような? でも、〝外道マン〟が出てきてからも面白いからなぁ…

作風が変わったのは、掲載誌が変わったのも大きいと思います。
隔月間の『PREMIUM』時はページ数が多いこともあってジックリと描きつつも各話各話で話をきれいにまとめており、隔週の「グラジャン」本誌に移ってからはスピーディかつ次回への引きが強烈な展開となっております。

打ち切りとなったようですが、残された話数で上手くまとめているのは流石。
でも『ブラック…』前半の時期まで終わってしまったので、もっと先の話も読みたかったです。
『ドーベルマン…』と『ブラック…』に挟まれているから影の薄い『リッキー…』の事もちゃんと描いてくれたので、語られることの少ない『ラブ&ファイヤー』や『キララ』の裏話も楽しみにしてたのですが。
「週刊少年ジャンプ」を離れ、集英社を離れ、過去作の続編を描きつつも、やがて「ジャンプ」の名を持つ雑誌に戻って『外道マン…』を描く―
そこまで描いてほしかったぜ~~~~

単行本がもっと売れれば、第2部もありえるかも?

前回と今回、このブログで取り上げるにあたって、ネタバレし過ぎないように内容紹介はかなり絞りました。
説明しだすと長くなる、賛否両論になるから扱いが難しい、このブログ向けではないから、といった理由で触れなかったこともあります。勧善懲悪や外道と並ぶ「平松マンガ」のお約束の要素、エロにも触れてませんし。
敢えて取り上げなかったことしては、

  • 憧れの人・美奈子さんとのエピソード
  • 歴代の編集(『外道マン…』担当も含む)との対立
  • 『ドーベルマン…』実写映画化
  • 他の漫画家との交流
などなどと、いろいろと読みごたえがあります。
気になった人には、是非単行本を買って読んでもらいたいです。


以上、平松伸二著『そしてボクは外道マンになる』でした。
令和の世に『外道マン…』が復活するのを祈って、今回の記事は終わりたいと思います。


(2019年6月9日追記。文章を一部修正しました)
(2019年6月13日追記。文章を一部修正しました)



(以下、7月29日追記)



そういえば、『外道マン…』よりちょっと前に連載していた『ザ・松田 超人最強伝説』の第1巻に収録されている特別編にも平松先生が出てきたことを思い出したぜ~~

↓に貼るから、よ~く見てみろ!




コレがそうよ~~



『外道マン…』版と違って、『ザ・松田…』版の平伸冴えない感じだぜ~~~
フフ… 原作者といえど、この作品の中では脇役(?)よ!主役のザ・松田の引き立て役になってしまうのも仕方なしよな~~


ちなみに、実際のご本人『外道マン…』版の方に近いのが面白いところよ~~
なのに、自分をカッコ悪く描くコトも辞さないとは、

さすが平伸だぜ~~~!!

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