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「あッ! 人間が溶ける! ヨロイ元帥登場」(その2)

2019.08.23 (Fri) Category : 特撮

(本文は8月19日、22日、26日~29日、9月1日に書いています)

8月18日の記事に続いて、『仮面ライダーV3』第41話「あッ! 人間が溶ける! ヨロイ元帥登場」の話題。
前回の記事はこの回から本格的に登場するデストロン最後の幹部・ヨロイ元帥の話題が中心で、第41話以外の話題が混ざりつつも、肝心の第41話の話自体にはあまり触れていませんでした。
そこで今回は、第41話の内容について書こうと思います。
(続きは後で書きます)


(ここからは8月19日、22日、26日~29日、9月1日、2日に書いています)


まず基礎知識として。
『V3』のこの時期のエピソード(第39話~第42話)は、前作『仮面ライダー』のエピソードをリメイクしたものとなっています。シナリオのおおまかな流れは同じで、名称などを『V3』のものに変更しているわけですね。
二番煎じになるかと思いきや、それぞれの主人公の個性の違い、主人公に絡む役割のキャラがレギュラーかゲストかの違い、元のシナリオにはいない幹部の存在もあって、意外と別ものに見えます。
何より前作初期のホラー路線の要素が加わることで、人知れず蠢く敵組織・怪人の不気味さや怖さ、対するライダーの改造人間の孤独や苦しみが描かれたのもプラスポイント。2クール終盤頃から風見志郎「強く・正しく・優しい」、まさに完全無欠の正義のヒーローって感じになっており、敵対するデストロン怪人も能力や装備とかで強さを前面にアピールした感じになってましたが、それらとは違う一面が加わったことで話に深みが増しています。
まあシナリオ流用の弊害もありまして、
よくツッ込まれる空飛ぶ怪人で構成されたツバサ軍団に、何故か植物モチーフのバショウガンがいる」(※植物怪人のサラセニアンの話を流用した為)ということ(第39話)や、
怪人カタツブラー風見あらためて脳改造手術を受けろ」と、まるで「風見がデスロトンによって改造されたものの、脳改造だけは免れていた」かのような言い方をしてきたり(※前作の本郷ならまさにその通りなのですが、ダブルライダーの手によって改造され、脳改造はされそうになったこと自体ない風見だと違和感が…)(第42話)
アレ? と思うところもあったり。
(いちおう「本編で飛んでないだけで、バショウガンという怪人は(芭蕉がモチーフだけど)実は飛行できる」とか、「(ダブルライダーに改造された仮面ライダーV3としてではなく、デストロンの戦士となる為に)あらためて脳改造手術を受けろ」と解釈すれば、まあ納得できなくもないですが)

一方で、元のシナリオにあった「悪の組織に捕らわれた女性を無事に幼い弟の下に届ける」というくだりに、「デストロンに殺された家族のことを思い出す風見」という本作ならではの要素を加えていたりもします。
風見が成長してからはほとんど見せなくなった面をシナリオの流れで自然に触れさせることで視聴者に思い出させつつ、しんみりと味わい深いラストとなっていました。(第39話)

(続きは後で書きます)


(ここからは8月19日、22日、26日~29日、9月1日、2日、4日、5日に書いています)

話をいよいよ第41話にしまして…

第41話は『仮面ライダー』第3話「怪人さそり男」の流用。
プロットを書くと、

悪の組織から脱走してきた囚人を保護した主人公の前に、旧友が現れる。組織の存在を知っており、協力を申し出る旧友。これ以上ない援軍の登場に喜ぶ主人公だったが、実は旧友は組織の改造人間だった…
という流れ。

さそり男となった早瀬五郎は、本郷 猛とはいろいろと競い合う親友でしたが、どんな分野でも本郷に勝つことができず、本郷に勝つ為にショッカーの改造人間となった男。本郷は人間の自由のためにショッカーと戦う道を選んだのですが、その一方で自らの意志でショッカーに入る人間もいるというショッキングな事実! これは、始まったばかりの『仮面ライダー』という番組の世界観を伝える意義も大きかったと思われます。
今回のガルマジロンの方は、やはり風見志郎にまったく敵わなかった男・高木裕介が改造された姿なのですが、高木は風見を逆恨みするようなことはなく、それどころかデストロンの改造人間になった後も風見に友情を抱き続けていました。

ではなぜ高木は怪人になったのかというと、デストロンの思想に共鳴したからでした。

デストロンが世界を征服すれば、やがて人間は今よりももっと豊かな生活を送れるようになる―


その後どうなったかを書く前に、この回のちょっとした注目ポイント。
実はこの回、珍しくデストロンの女性戦闘員が登場します。暗闇の中で登場で姿がハッキリとは分からないのが残念ですが。
これもシナリオ流用の賜物で、ナースに扮して主人公を欺こうとする役割なので必然性のある登場となっています。おかげで、デストロンという組織の裾野の広さがよく分かったり。
なお『仮面ライダー』の方でも女性戦闘員は、第1話と第3話ぐらいにしかでません。ちと残念。序盤の試行錯誤の時期を過ぎてオミットされた要素なのでしょうが、『アマゾン』に出てくるゲドンの赤ジューシャみたいに女性戦闘員が登場する話も見たかったですね。


(続きは後で書きます)

(ここからは8月19日、22日、26日~29日、9月1日、2日、4日~6日に書いています)

ちょっと後のエピソードから登場する結城丈二(=ライダーマン)はデストロンが悪の組織であることや自分の研究が悪事に利用されていたことを知らず、ヨロイ元帥のことも「悪い奴だが(それでも)仲間だと思っていた」そうなので、デストロンの中には過激なやり方をする一派がいるぐらいの認識だったものと思われます。
一方、今回の高木裕介はデストロンが悪の組織であることを知っており(そもそも風見に接触する際にそのことを話題にしている)、それでも尚デストロンの理想を信じていました。
デストロンの行動は(あまり良くない表現ですが)「必要悪」とし、犠牲が出ることも割り切って考えていたのかも知れません。
すべては来るべきデストロンがもたらす未来の為とし、風見にもデストロンに入るように勧めます。

罠に嵌まって牢屋に閉じ込められた風見に危害を加えるのではなく、親友として説得する高木。
それは、風見を死なせたくないという彼個人の思いからでした。
そんな高木に対し、風見は変わらぬ友情が嬉しいと伝えた後、敢えて言います。

「お前のデストロンに対する考え方は間違っている! 掲げた文句は立派だが… 豊かな生活ができるのは、ほんの一部の幹部だけじゃないかッ!?」

この回は冒頭から「酷使して疲労で働けなくなった囚人達を、新怪人の能力テストで殺害」、「わざと殺さなかった囚人の山下を脱走させ、風見をおびき寄せる罠に使う」「山下は無事に妻子と再会できたものの、今度は一家全員がデストロンに捕まってしまう」という展開となっています。
上司であるヨロイ元帥の指示もあったのでしょうが、すべて高木が絡んでいます。

山下のような目に遭う人がおおぜい発生する。
「俺はそんな世界はまっぴらだ!!」という風見の言葉に動揺する高木。
風見を欺こうとして接近した際に山下一家と出会ったことで、デストロンの犠牲者はなんの罪も無い人々だとあらためて思い知らされたのでしょう。
風見は、高木にデストロンと戦うよう説得するのですが…

そこに現れたのは、ヨロイ元帥!?
敵である風見に近づいた高木に「裏切り」の疑いをかけます。
そして裏切り者がどうなるのか? それを思い起こさせる言葉を投げかける元帥。

「死刑!?」

その二文字が頭によぎり、恐怖で半狂乱となる高木。
風見はV3に変身して、牢屋から脱出。山下親子を救出した後、高木を追います。

ヨロイ元帥という新幹部登場のエキスもある為か、悪辣さは元帥が担当。
ヨロイ元帥の非道さを強調する為に、ガルマジロンはあまり例のないタイプの怪人に。
風見と高木の友情の描写はリメイク元には無い点で、只の流用になっていない、いい変更だと思います。

風見の願いむなしく、ガルマジロンとして戦うことを選んだ高木。
「俺は裏切っていない!」という叫びは、組織への忠誠を示す為か、それとも自分に言い聞かせる為のものなのか?
「高木、目を覚ませ! 親友のお前とは戦いたくないんだ!」
風見の必死の叫びも、彼には届かなかった…

高木が風見を説得する為に現れたシーンから、ラストシーンまでスピーディに話が進んでいきます。
ガルマジロンとV3のやり取りが観ている者の心を打ちます。
途中から名曲「V3アクション」のBGM版が流れ始め、決着が着くまでの戦闘を盛り上げてくれます。

ガルマジロンには「人間が溶ける」鱗を投げつける技がありますが、最終決戦にてもう1つの技を披露。
それは、「ガルマジロンバック戦法」!!
敵に背中を向けた後、後ろ向きに突進して背中のトゲで攻撃するという技。
後ろ向きに進む関係上、スピードが出せない&敵が見えづらい為か、V3には避けられたり受け止められたりする始末。
しかし、受け止めた際にV3はトゲを掴んで必死に堪えていたので、スゴいパワーで迫ってきているのだと思われます。
ヨロイ軍団の怪人なのでトゲを始めとして全身が超硬質でしょうし、当たったらヤバかったでしょう。
余談ですがガルマジロンはアルマジロの怪人なのに、意外にも体を丸めての攻撃はしませんでした。デザインが「アルマジロが人間のような体型になった姿」というスタンダードなものではなく、「アルマジロ型の鎧を纏った異形の人間」という感じだからでしょうか?


そして、V3はV3回転フルキックでガルマジロンを倒す。
人間の姿に戻った高木の下に駆け寄るV3。

「おい! 高木…!!」
「志郎… 俺は……」

事切れる高木――


アジトから無事に逃げ出せた山下一家。
そこに高木の亡骸を抱えたV3が現れた。
しかしV3は山下一家には目もくれず、静かに歩き去って行く。
風見こそがV3である事を知り(※V3に助けられた山下は家族と再会する際には風見と一緒だったので、同一人物だと気づいているハズ)、その風見と高木が再会を喜びあっていたり高木がガルマジロンに変貌するのを目撃した山下一家は、2人に何があったのかを察したのでしょう。
山下と妻は無言で頭を下げ、娘は両手を合わせていた。

流用元では助けた囚人は結局殺されてしまう(それもあっさりと)のですが、こちらでは無事に生き残れました。前作初期路線ほどのシビアさは『V3』には合わないと思うので、助かってよかったです。
単に生き残らせるだけでなく、高木説得に彼らの存在が絡んだり、ラストの余韻に一役買ったりと、意味のある出番なのもいいですね。

ラストシーン。
いつもなら風見の姿でバイクに乗って去っていくのですが、今回は変身したまま。そして、静かに歩いていきます。
仮面に隠されたのは、亡き友への涙か? それとも悪への怒りか?
それは誰にも分らなかった…


ヒーローとしてのカッコよさが目立つV3ですが、今回のエピソードでは人知れず悪と戦う男の孤独と悲哀が描かれていました。
リメイク元からは良さげな要素を選んで投入され、新幹部登場というイベント要素だけでなく終わらせることもなく、1つの独立したエピソードとして高い完成度となっています。
また、ラストのガルマジロンとの戦闘シーンは、そこに至るまでの過程、互角の攻防、勇壮なBGMと、非常に見ごたえがあるものとなっています。
『仮面ライダーV3』の中でも秀作エピソードではないかと思います。
『V3』を観たことがない人がとりあえず見てみるのにもいい話ではないでしょうか?

それでは、今回はこんなところで。

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